2013年2月10日日曜日

チェロの購入① 弦楽器販売店の選び方 その魑魅魍魎


チェロを始める時には、学生なら学校の楽器、教室で習う場合はその教室の楽器を借用することも多いが、しばらくすると、必ず自分の楽器が欲しくなる。

そして近くの楽器店に飛び込んで、楽器を見て回ることになる。

ところが、この弦楽器販売店というのが、かなりのくせ者である。
商売なので、仕方がないところもあるのだが、結果、とんでもない楽器をつかませられて泣く人も結構いるのではないかと思う。

この業界は、品質や販売について法律上の規制がない。
一応、中古楽器を売るのなら、古物販売の許可は必要になるが、それさえ持っていない店もある。
口先三寸で販売して、だまされた方が悪いといった雰囲気さえある。


楽器購入後、どうもおかしいと思って再度訪問すると、彼らが使う言葉にこんな言い方がある。

「お客様自身が、この楽器に100万の価値があると判断されて購入されたのでしょう」(=私の責任ではありません)

はっきり言って、詐欺師の言い方である。


ニスを塗り直す、板を薄く削り直して響くようにする、破損した複数の楽器の使える部分を集めて、一つの楽器を再生する、どっかからラベルを持ってきて、勝手に貼り直す等々。

まあなんでもやり放題である。

何をやっても、それを客に説明するのなら許されるが、そんなことは全く言わない。「19世紀にドイツでつくられたものです」としか言わない。「19世紀に」「ドイツでつくられた」ことに間違いはないので、うそはついていないという理屈なのだが、表板が何カ所か割れていますとか、ネックはつけかえたので、オリジナルのものではありませんとかは絶対に言わない。

時には、ドイツ製の楽器に、イタリアのラベルをはって客に出すということも、平気でやる。
なかなか認めず、いよいよ言い逃れがきかなくなった時でも、「お客様が不快に感じられるのなら、ひきとりましょう。ところで引き取る際は購入金額の7割5分で引き取るのが決まりです。」という言い分で終わらせようとする業界である。

特に古い楽器は難しく、購入後の販売店とのトラブルも多いようです。

私が聞いたトラブルの一例をあげておきます。

150年ほど前のイタリアの楽器と言われ購入したものの、どうもおかしいと思い、楽器の鑑定をしてもらったら、ラベルはイタリアだが、楽器はドイツ製、表板も裏板も削り直し、ネックも別物というお粗末な物で、評価額と販売額に四倍以上もの開きがあったこともわかったので、それをつきつけ交渉し、なんとかお金を全額、取り戻したということです。でも先に書いたような言い方で引き取っただけで、謝罪も間違いも認めることも無く、最初は全額返そうとする意志も示さなかったそうです。その人も頭に来て、かなり圧力をかけるものの言い方(彼は地方のテレビ放送会社勤務です。名刺を出したら顔色が変わったそうです)をしたそうです
とある関西の、結構昔からやっているお店です。気をつけてください。

 
特に個人経営の店は、当たり外れが大きいです。
腕の良い職人さんが、良心的にこつこつと商売をし、アフターケアも親身になってやってくれるところもあるのだが、商売っけがあまりに強すぎるお店もある。
一方、大きな会社で昔からの老舗と言われる店でも、あやしい楽器をまぎれさせることもあるので油断ができない。

弦楽器販売店は、店のたたずまいも高級感を演出しており、また芸術という衣を羽織っているのでわかりにくいのだが、実は基本的に程度の低い業界なのである。

骨董屋さんで買い物をするときには、最初から用心して、これは偽物じゃないか、値段ふっかけてるだろうと思いながら店主と交渉をしますが、 基本的には同じ業界と思い、お店に入った方がいいと思います。

習っている先生に紹介してもらうことも多いですが、これはこれで、その店で買わないとだめなような感じになってしまいますし、程度の悪い先生はお店と結託している場合もある。

なお、紹介者に楽器店がリベート(紹介料)を支払うのは、この業界の慣例です。そういう制度がいいかどうかは別としても、その分(約10%程度)は楽器の価格に上乗せされているということですね。


かくも楽器選びは難しい。

これから楽器を選ぼうとする人は、

①必ず信頼できる人を介して、お店を紹介してもらうこと。 
基本的には、楽器選びはお店選びとよく言われます。その人から、事前にお店に連絡をいれてもらった上で、その店を訪問するのが一番だと思うが、そのような伝手もなかなか普通はないので、その場合は、


②最初は、なるべく大きな昔からの販売店に行くのが無難である
(いきなり飛び込みで個人経営の楽器商に入るのは避けましょう)

先に書いたように、大きなお店でも怪しげな楽器を出してくるので(=東京でも関西でも経験しました) 注意は必要だが、大きい店は、楽器の数も多く、試奏部屋も備えてあることが多い。
予算を言えば4~6台の楽器はすぐに出してくれるので、多くの楽器にじっくりと触れることが可能だし、また同じ価格帯の楽器でも、形や色もいろいろで、また様々な鳴り方をするということがわかり、楽器を見る目も養うことができる。
その上で少し目が養われたら、小さな店も回ってみて良いでしょう。(先に書いたように小さい楽器屋はピンから切りまであるので十分注意しましょう。)


③あまりにペラペラと饒舌にしゃべるお店は避けること
とにかく、愛想がよく、進め方が上手な店がある。一概にそういうことが悪いとは言えないのだが、応対していると、買わないといけないような雰囲気にさせられる場合がある。

「これはとても良い楽器で、こんな楽器はなかなか出ない」とか

「この楽器は、他にも欲しいと言っている人がいるので、買われるのなら早めに決められた方がいいですよ」
(←これは、多くの場合、セールストークですが、たまに本当の時があります。良い楽器は、誰が見ても良いものなので、あまりためらっていると、売られてしまう場合があります。)

というような言い方で、購入圧力をかけてくるのは、複数のお店で経験した。

まあこれは、はいはいと聞き流して良いのだが、ただ何かしゃべっていて不愉快な感じがする店は、避けた方がよい。不愉快な感じがするのは、相手に誠実さがないからである。またセールストークが多いと、落ち着いて楽器を選べない。

御○ノ○駅前の楽器店で、チェロをなにげに見ていたら
「お目が高いですねえ。この楽器は、このお店で一番良い楽器です。」
と言われたことがある。
ふらっと入ってきて、目が飛び出るような値札の下がった楽器を見ている素人相手に、 「お目が高い」はないだろう。それこそ「恐れ入った」話である。

④自分の技術を自慢したり、他店をこき下ろすような態度の店は避けること。
③と関係しますが、店に入ったとたんに、ご自身の技術がいかに優れているか、他のお店は何もわかっていない・・・というような講釈を始める人がいます。それは本当かも知れませんが、それをしゃべってしまう人は、ダメだと思います。
自分の技術に自信があるのかも知れませんが、それを口に出し、他店を罵倒する態度は、強い自己顕示欲があるにもかかわらず、社会的にはそれほど認められていない不満のあらわれとしか思えません。
真面目に研修をつみ、さらに実力を伸ばそうとしている技術者は、決してこのような態度はとりません。


楽器店を経営する人は、だいたい次のような人たちのようです。

ア、技術者から販売店を経営するようになった人
一般的に真面目な人が多いが、中には視野が狭く、社会的な訓練を経験していない人もいます。そのため時に独善的な技術論を述べる場合があり、また言葉遣いや態度も独特で「もう少し考えてしゃべりなさいよ」と言いたくなる人もいます。

イ、様々な職業を経て、楽器店に目を付けるようになった人。
一般的に商売気が強く、押しが強く話も上手です。ただ社会的な地位ということに劣等感を持ち続けている人もいるようで、こういう人は、倫理観という点で要注意です。対応を間違うと、おかしな楽器をつかまされる可能性が強いです。

ウ、他は大規模な会社で組織的にやっているところですが、個人経営からスタートし規模を拡大し、支店を持つようになったところと、大きな会社が手を広げ弦楽器部門として発足したところの両方があります。前者はアやイで述べたような雰囲気が残っており、従業員も楽器に詳しい人がいます。後者は一通りの知識は持っていますが、専門性にやや欠ける感じがします。


⑤新作も結構あるのに、古い楽器を強引にすすめてくるお店は避けましょう。
古い楽器は、その音やたたずまいが魅力的ですが、割れの修復や修理歴もあり、購入には大きなリスクがともないます。またラベルはその楽器にもともと貼ってあったものとは限りません。まず適当に貼ってあると思った方がいいです。そういうリスクのある楽器を特に進めてくる場合、何か裏があるので慎重に対応しましょう。

⑥途中でなんとなくおかしいと感じたら、いくらよく響く楽器があっても、やめる勇気を持つことも大切です。
特に強引に進めるわけでもないが、何かこちらをじっとりと観察しているような感じの店に行ったことがある。お店の雰囲気がいかにもよさげだったので、飛び込みで立ち入った次第である。

しかし、何台かの楽器のうちに、それとなく怪しげな古い楽器をまぜて出してきた。表板も裏板も削り直し、テールピースもペグも安物を使い、全面的にのっぺりと再塗装してある楽器に200万円以上の値札を下げていました。

「この店はこんな楽器を客に出すんだ」と思いました。

たぶんそれ以外の楽器は大丈夫だろうとは思いましたが、何となく嫌な感じが強くなり、再訪するのを止めました。

後で知人(音楽大学の先生)から、「良い楽器をたくさんもっているところだが、飛び込みで入る人には、良くない評判を聞く時がある。」という話を聞きました。

まあ、こちらが気をつければよい楽器を買えたのかも知れないが、人を介していれば、そのような楽器は決して出さなかっただろうと思うと、商売とはいえ、いやな業界ですよね。

一度買ってしまえば、普通の生活をしている人にとっては、もう一度買うチャンスはない、高い買い物である。セールストークに押される事無く、慎重に、時間をかけて選んで下さい。 

次に楽器そのものの選び方を書きます。「チェロの購入②」へ


     





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